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ethno idea lab について

ethno idea labは、(株)電通ストラテジスト竹内好文と明治大学商学部藤田結子ゼミの産学共同研究プロジェクトです。エスノグラフィーの学術分野での豊富な経験を持つ明治大学藤田結子准教授の指導の下、明治大学の学生が家庭や店舗など自然な状況の中で観察を行います。彼ら彼女らが、さまざまな製品やサービスの自然な消費行動を観察し、消費者の解決されていない「用事」を発見することにチャレンジします。ethno idea labでは、商品開発やマーケティング・コミュニケーションに研究を応用するパートナー企業を募集しています。

*「用事」:ハーバード・ビジネス・スクールのクレイトン・クリステンセン教授が提唱した概念

プロジェクトリーダー

㈱電通 ストラテジスト&クリエーティブディレクター竹内好文

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ethno idea labプロジェクトの背景について

今から16年前の1999年。欧米のマーケティング研究者が「消費者に問う」形式の伝統的なマーケティングリサーチの限界を指摘する論文(1)を発表しました。それは、「必ずしも、人は自分が答えたとおりに行動するわけではない」という問題です。

たとえば、ゼネラル・ミルズ社のために行ったある研究(2)では、グループ・インタビューで「うちの子供は朝食にはヘルシーな物しか食べないの」と答えた母親がいました。しかし、実際に家庭での様子を録画したビデオを後から確認したところ、玄米シリアルを子供が嫌がり、自分でヘルシーとはいえないシリアルを食べている様子が映し出されていたのです。

また、1998年に『ハーバード・ビジネス・レビュー』に掲載された論文(3)では、100例に及ぶ購買意向データとその後の購買結果を比較しました。その結果、「あらゆるグッズに関して、一般的に、人々は自分自身の長期にわたる購買行動を確実に予測はできない」と結論づけました。このような問題提起を通して、欧米ではエスノグラフィーのマーケティングへの応用が注目されました。伝統的なマーケティング手法の欠点を補う形で、さまざまな企業がエスノグラフィーを活用し始めたのです。

そもそもエスノグラフィーとは何か? エスノグラフィーとは、文化人類学分野で発展しさまざまな分野で応用されている質的調査法です。調査者が研究テーマに関わるフィールドに自ら入って、人々の生活や活動に参加し、観察を行ないます(=「参与観察」 participant observation)。調査者は、数ケ月から数年にわたって、フィールドで観察したり、活動に参加したりします。また、「行動」を観察するだけでなく、その現場の一員として「参加すること」が重視されています。このエスノグラフィーについてより詳しく知りたい方は、明治大学藤田准教授の共編著『現代エスノグラフィー』をご参照ください。この「エスノグラフィー(ethnography)」ということばをGoogle books Ngram Viewerで"ethnography"を検索し、デジタル化された英語書籍の中での出現率を見ると、長い歴史があることがわかります。そして近年では、さまざまな分野で注目されています。

エスノグラフィーは中長期的な企業のイノベーション開発に有効です。たとえば、レゴのマインドストームやサムスン電子のテレビ機器デザイン開発など欧米企業の成功事例(4)が知られています。また、P&Gは"Consumer is boss"(消費者はボスである)というメッセージの下、イノベーションを起こすために、エスノグラフィーを有効に活用しているそうです。

なぜ、これらの企業はエスノグラフィーに注目したのでしょうか。それは、従来の伝統的なマーケティングが、商品やブランド単体にフォーカスしてリサーチするのに対し、エスノグラフィーは、一連の消費者行動を観察対象とするからです。たとえば、シリアル製品であればその製品だけでなく、朝食や学校帰りのスナックの飲食行動を包括的に調査します。これによって、より深いインサイトが得られます。

そして、消費者の消費活動の全体像(例、朝食)を捉えることが重要なのは、企業が気づいていない「消費者の片付けるべき「用事」を発見できる」(5)可能性があるからです。

たとえば、ゼネラル・ミルズ社は、エスノグラフィーを活用し、次のような発見をしました。多くの母親が仕事を持つようになったために、アメリカの家庭の朝食の風景が大きく変わっていたのです。

「父親は6時台に仕事に出かけ、外で朝食をとる。母親も7時から7時15分の間には家を出て、4歳の子を保育園に、小学校1年の子を学校に送ってから仕事に向かう。そのため、6時30分から7時の間に、手早く子供たちに朝食を食べさせなければならない。母親は全粒粉ワッフルとバナナを栄養価の高いヘルシーな朝食だと思い、子供たちの朝食にしていた。これなら手早く食べられるはず。

ところが、小学校1年生の子が食べていたのは、全粒粉ワッフルとバナナではなかった。ミルクを入れるとその色がブルーに変わるシリアル(母親にとっては食べさせたくない種類のシリアル)だった。小学校1年生の子は、自分でキャビネットからそのシリアルをとりだし、ボールに入れ、ミルクをかけて食べていたのだ。

母親は、小学校1年生の子が用意した朝食を食べないため、その子が残したバナナを食べ、子供用のワッフルはゴミ箱に捨てていた。4歳の子は、いつも朝食を食べずに保育園に行く。なぜなら、朝の6時30分頃まだお腹がすいていないからだ。後日、エスノグラファーが保育園を訪ねると、4歳の子はお腹が減っているからと、母親に持たされたお弁当を(お昼前に)食べていたのだ。

母親が子供たちと出かける直前に電話が鳴った。それは祖母からの電話だった。「朝食には栄養のあるベーコンエッグを食べさせなさい」と母親は祖母から毎朝お小言をいわれていた。母親はエスノグラファーに次のように語った。「祖母の時代とは違うのよ。わたしは仕事も持っているし、ベーコンエッグを食べさせる時間なんてないの。だから全粒粉ワッフルとバナナを子供たちの朝食にしているのよ」と。そして、ミルクの色がブルーに変わるシリアルを買っていたのは父親だと言う。父親が自分の子供の頃を懐かしんで買っているものだった」(6)。

エスノグラファーは、この朝食の観察結果から、母親にとって、子供が喜び、子供の栄養にもなるような朝食を見つける「用事」があるというインサイトを得ました。その「用事」を解決するために、 “GO-GURT”というチューブ入りのヨーグルトスナックを開発しました。 “GO-GURT”は、栄養価が高いだけでなく、子供たちにとっても楽しい朝になるスナックでした。結果、 “GO-GURT”は、発売2年で市場の7%を獲得するヒット商品となりました。

そして、ビッグデータ分析への関心の高まりです。実は、ビッグデータ時代だからこそ、エスノグラフィーの重要性が高まります。国立情報学研究所 アーキテクチャ科学研究系の佐藤一郎教授は「従来のデータ分析はコース料理、ビッグデータ分析はビュッフェ・スタイル」と例えました(7) 。つまり、ビッグデータは、データサイエンティストが立てた仮説を基に、ビュッフェに並ぶ無数の料理(データ)からいくつかを選び、分析し、その仮説を検証します。しかし、もし、その仮説が間違っていたら、意味がありません。

ビッグデータ分析は、もはやだれもが手にできる環境があります。しかし、規模の経済や先行者利得が得やすいとなれば、ビッグデータ分析だけでは競争優位を確保することは難しくなってくるでしょう。そして今、AI技術に多くの注目が集まっています。私たち自身の仮説発見能力を補うことも確実でしょう。しかし、まだAI技術を持ってしても、私たちのプライベート空間まで入り込むことは難しいのです。

そういった観点を踏まえれば、マーケターがエスノグラフィーを活用し、仮説を発見する能力を磨くことは多くの企業にとって競争優位の源泉ともなってくるのではないでしょうか。

そんな背景から、まだ欧米ほどに広まっていないエスノグラフィーを日本の社会や企業活動に役立てようと、電通ストラテジスト竹内好文と明治大学商学部藤田結子ゼミの産学共同研究「ethno idea lab」(エスノ・アイデア・ラボ)が2015年4月にスタートしました。産学共同研究にあたっての目的と意義について、 藤田准教授からのメッセージはこちらをご覧ください。

参考文献
1:Mariampolski, H., 1999, "The Power of Ethnography," Journal of Market Research Society, Vol.41, No. 1, p.75; Fellman, M., 1999, “Breaking Tradition,” Marketing Research, Vol.11, No.3, pp.20-25.
2:Fellman, 1999.
3:Ovans, A., 1998, “The Customer Doesn’t Always Know Best,”Harvard Business Review, Vol.76, No.3, pp.12-13.
4:Christian M., 2014, The Moment of Clarity, Harvard Business School Press.
5:クレイトン・クリステンセン, 2003 『イノベーションの解』, 翔泳社.
6:National Association for the Practice of Anthropology, 2002, “American Breakfast & the Mother-in-Law: How an Anthropologist Created Go-Gurt,” April 30.
7:佐藤一郎, 2015, 第1章「ビッグデータの実像」,坂内正夫監修, 『ビッグデータを開拓せよ』, 角川学芸出版.

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ethno idea lab が提供するサービス・製品について

エスノグラフィーは万能ではありません。しかし、欧米では、エスノグラフィーのマーケティング応用に関する学術論文は豊富です。つまり、マーケティングリサーチのうち、定性調査の中核的な手段としてエスノグラフィーを活用する企業が多いと考えられます。

エスノグラフィーは、とくに消費者にとっても企業にとっても未知の領域となる革新的な製品開発やプロモーションの的確な判断をする際に役に立ちます。伝統的なマーケティングリサーチでは、企業がその思考フレームの中で仮説を立て、消費者に問いかけることになります。しかし、消費者に経験したこともない製品について質問したとしても、その消費者の答えはあてにはならないことが多いのです。たとえば、iPhone発売前にユニバーサルマッキャンが実施した1万人を対象としたグローバル定量調査では、その調査結果から次のように結論づけました。

Products like the iPhone are desired by consumers in countries such as Mexico or India, but not in affluent countries. The study stated:"There is no real need for a convergent product in the U.S., Germany and Japan,"
(メキシコやインドの消費者は、iPhoneのような製品を望んでいるけれども、先進国の消費者は求めていない。この研究結果からは、米国やドイツ、日本では、すべての機能を一台でこなす製品に対するリアルなニーズはないといえる。)

しかし、この結果が現状とはまったく異なっていることは、伝統的なマーケティングリサーチの限界を示す一例と言えるでしょう(1)。

エスノグラフィーを活用した企業のイノベーション創造について、いくつもの成功事例が知られています。しかし、わたしたちが調べた限りでは、そのノウハウは企業秘密となるためなかなか公開されません。その専門家の協力なしに一から導入するには大きなハードルがあるといえます。

そこで、ethno idea lab(エスノ・アイデア・ラボ)では、"ethnography for every marketer"をスローガンに、エスノグラフィーのマーケティングへの応用に興味がある企業に対して、共同研究のチャンスを提供しています。ただし、観察対象が限られるため、全ての製品やサービスに活用できるわけではありません。

以下で、ethno idea lab(エスノ・アイデア・ラボ)でのエスノグラフィーを活用したマーケティングリサーチのステップをご紹介します。ご興味がある方は、お気軽にお問い合わせください。

what / 観察対象家庭のプロフィール

東京都区内居住の約20世帯で観察を行います。エスノグラファーは、主にその家族の一員である明治大学の学生が担当し、藤田准教授の指導の下で、フィールドノートや写真、動画などを活用して、家族のさまざまな消費活動を記録・記述します。

how / どのように実施するのか?

1.スタートアップミーティング:

ethno idea lab の共同パートナーのニーズをヒアリングするとともに、エスノグラフィーを活用した定性調査について理解いただくためのスタートアップミーティングを実施します。このミーティングから、参加される企業の要望を把握し、観察する一連の消費行動を確定させます。エスノグラフィーでは、グループインタビューのように、対象となる特定製品やブランドの消費行動を調べるだけではありません。それに付随する一連の消費行動を観察します。たとえば、歯ブラシが対象商品であれば、朝の身だしなみ活動(洗顔、歯磨き、お化粧など)全般を観察対象とします。このスタートアップミーティングは、ethno idea lab(エスノ・アイデア・ラボ)のプロジェクトリーダーである明治大学藤田結子准教授と電通ストラテジストの竹内好文が担当します。

2.問いの設定:

エスノグラフィーを活用した調査では、アプリオリな仮説はおきません。いわば「真っ白な状態で」観察に臨み、そこからインサイトを得るために、まず、観察に当たっての「問い」を設定します。たとえば、20代女性の化粧品の新製品開発に活用する場合なら、「20代女性にとって朝の身だしなみの時間とは何を意味するのか?」といった問いを設定します。この問いの設定も、スタートアップミーティングでの参加される企業との対話を通じて決定します。

3.観察手法と観察期間、レポーティングの検討:

問いを設定した上で、参加される企業のニーズに合わせ、実際の観察手法と観察期間を検討します。観察の際の基本的なデータ収集方法は、明治大学生が記載するフィールドノートですが、写真やビデオなども追加することは可能です。観察期間は、対象とする製品やサービスにもよりますが、最低3ヵ月間の観察期間を基本としています。季節性を見る必要があるものの場合は、1年間を観察期間とするのが理想です。また、参加されるパートナー企業へのレポーティングは、観察終了後ではなく、状況報告を含め適宜行いますが、そのタイミングも同時に検討します。実施予算は、ご要望に応じて変動しますが、産学共同研究の性格上、営利企業が提供するコストよりもリーズナブルです。

4.観察開始:

対象家庭の観察は、2で例に挙げた20代女性の消費行動とした場合、彼女の行動だけでなく、家族とのやり取りも含めて観察をします。基本は、家庭内での観察です。しかし、参加されるパートナー企業が店舗の了解をとることができれば、対象とするインフォーマントだけでなく、店舗を訪問する不特定多数の消費者の観察も可能です。家庭での観察に、パートナー企業のマーケターが参加することはできません。しかし、必要に応じて、マーケターも同行の上で、家庭でのインタビューを実施することは可能です。なお、観察対象とする家庭には、自然な状態で日常的な消費行動を観察するために、観察対象家庭及びインフォーマントには、参加されるパートナー企業の具体名は公表しません。たとえば、ある化粧品メーカーのための調査という情報提供に留めます。そのため、インタビューに同行いただく場合も、スーツではなく、普段着での参加をお願いすることになります。

5.観察結果の分析〜コーディング:

観察により収集したデータ(フィールドノート、写真、ビデオなど)を基に、明治大学藤田ゼミの学生と共に、観察結果の分析とコーディングを行います。このコーディング作業を通じて、膨大な観察データを元に消費行動のパターンを明らかにします。このステップには、パートナー企業のマーケターにも参加いただき、セッションミーティングを行います。そのセッションミーティングを通じて、企業にとって価値のあるインサイトの発見に繋げます。

6.消費者の「真の声」の発見を探索する:

エスノグラフィー調査で、明らかになった消費者インサイトをパートナー企業にとって役に立つ「消費者の真の声」と判断するために、その検証活動が必要となります。たとえば、20代女性の朝の身だしなみの時間の観察から、有益なヒントが得られたとしたら、定量調査やグループインタビュー、オンラインレビュー分析などを活用します。その有効性を確認の上で、既存製品を改良し、再び、観察対象家庭に商品を投入し、その自然な消費行動の中で何がおきるのかを再度観察する・・・といった形で発展させていきます。ethno idea lab(エスノ・アイデア・ラボ)でのリサーチ結果を基に付随する検証リサーチは、パートナー企業が通常取引のあるマーケティングリサーチベンダーを通じて行うこともできます。もし、パートナー企業が電通とお取引があれば、その既存チームでの作業に引き継いでいくこともできます。

参照
1:出典:Stanford Business

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お問合せ

ethno idea lab(エスノ・アイデア・ラボ)では、産学協同プロジェクトのパートナーを募集中です。一般家庭の日常的な消費行動を観察し、未解決の「用事」を発見したい企業の皆様のご参加をお待ちしています。以下の入力フォームに必要事項をご入力いただき、ご応募ください。

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